クリエイターの黒い愛用品 vol.002 長嶋りかこさん

今回のBATONは...
長嶋りかこ 研究員

長嶋りかこ  グラフィックデザイナー

1980年生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザ イン科卒、デザイン事務所 village®︎ 代表。VI計画、サイン計画、ブックデザインなど、視覚言語を基軸としながら活動し、対象のコンセプトや思想の仲介となって視覚情報へと翻訳する。 育児とデザインの仕事の両立の困難さから見えてくる社会のへの眼差しを綴った初の著書『色と形のずっと手前で』を出版。https://villager.theshop.jp/items/87231327

 

さまざまなジャンルのクリエイターが愛用する、黒い愛用品。定番品として今も買うことのできるものから、今ではもう手に入らないレアグッズまでご紹介いただきながら、黒のバトンを繋いでいく連載です。

1. パーマセル / Shur

撮影現場でよくカメラマンやアシスタントさんが腰に据えていて、何かあればさっとそれを出してくれ、場ミリをつけたり、撮ったフィルムに封をしたり、試し撮りのポラロイドに4辺貼ってリフレーミングしたりと便利なテープ。

自宅では、もっぱら息子との工作のためのテープとして愛用。手で切り取りやすく、ベトベトし過ぎず、それでいて粘着力はしっかりあって扱いやすいし、黒く直線的なラインが曖昧な平面をきりりと締めてくれます。エッジに貼ればアウトラインがくっきり創出され、中面にリズムよく貼ればしま模様となり、廊下に貼れば線路になり、床に一本貼ればスタートラインに。

2. むらちゃんの黒い毛玉

艶やかで、上品で、だけどワイルドで、甘えん坊で、優しくて、人が大好きな愛猫の、ブラッシング時に出る毛で作った毛玉。むらちゃんのブラッシング後、ふわふわと抜けた毛を毛玉ボールにして遊ぶんですが、どんなおもちゃよりも、これが一番興奮してくれます。

むらちゃんの漆黒の艶やかで滑らかな毛は、抜け落ちて体を離れると時間とともに色褪せてゆき、少しづつ灰色のグラデーションを帯びてくる。パサついた毛色とその感触は、いつか来る日のことを彷彿とさせもし、今この瞬間の戯れの時間をくっきりと尊いものにさせるんです。

3. giant oil pastel N0.023 / SENNELIER、黒 / Kitpas、charcoal pencils Dark / DERWENT

セヌリエのぼってりとした肉厚の極太オイルパステルと、キットパスの子供用 ライスワックスのチョークと、ダーウェントの木炭鉛筆のDark(lightとMediumもありますがDarkが一番好き)。

目の前にあるものを要約してアウトラインをとるような絵を描くのが好きで(それ自体は自分の仕事で行う情報の整理の作業と似ている)、誰に見せるわけでもなくたまに適当な線画を描くのだけど、その時に使う筆記用具です。筆圧の弱い私にとっては、どれもこってりとした黒い物質を紙に塗りつけるような描き心地でとても好み。