NHK連続テレビ小説「おむすび」はギャルが主人公。肌を黒く焼いた橋本環奈のギャル姿が新鮮だけど、あのガングロギャルたちはいったいどうやって生まれ、どこに行ってしまったのか。渋谷のセンター街に溢れたガングロ、ゴングロ、ヤマンバたち。この本は、その発生からブームの終焉までを追いかけ、ヨーロッパの貴族たちが持っていた海やビーチに対する憧れや開放感を「ビーチイズム」と名づけたうえで、そこで生まれた日焼けした小麦色の人々を「ガングロ・ルック」のはしりとして捉える。映画スターたちがビーチを舞台とした作品に登場して広まっていったイメージは日本にまで届き、70年代のサーフィンブームにまで続いていく。
そしていつしかビーチという舞台から離れ、ビーチ的なコミュニーケーションの舞台としてサーフィンショップが多く進出していた渋谷が次の場になっていった。そして90年代、「東京ストリートニュース!」や「egg」などのストリートファッション誌の登場を大きなきっかけとなって日本全国にその姿が広まっていく。
外見で自分のコミュニティを分けずともつながることのできるインターネットの台頭がギャル衰退の原因と著者は考える。小麦色という日焼けではなく黒=グロと表現される肌のブームは、街というリアルな場でしか繋がれず、表現することができなかった時代に出現した現象だった。
『ガングロ族の最期 ギャル文化の研究』
著者:久保友香
絵:ローランス・ル・ショー
出版社:イースト・プレス
山口博之 (やまぐち ひろゆき)
ブックディレクター/編集者。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部卒業後、旅の本屋BOOK246、選書集団BACHを経て、17年にgood and sonを設立。オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。出版プロジェクトWORDSWORTHを立ち上げ、折坂悠太(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』を刊行。猫アレルギー。
https://www.goodandson.com/