「平井真美子さんが語る黒の音」

WONDER #03 「黒って、こわいの?」のテーマ内で、作曲家でピアニストの平井真美子さん(@mamiko.hirai)に、黒のイメージを「音」にして頂きました。

それぞれの音が生まれる過程で、平井さんは何をイメージしたのでしょうか。演奏後に語って頂いた内容をお届けします。

(演奏する際にイメージしたのは)黒という光のイメージです。具体的な「もの」をイメージして弾くというよりも、記憶の中に取り込まれた光の種類をイメージしている感じです。

例えば、虹を見たときに、その色を解説するように音符を弾くことはできないのですが、その虹を見たときに感じる光のトーンのようなものを表現している、という感じでしょうか。 

(1曲目は)どんつきがある硬い黒ではなくて、漆黒のようなレイヤーとかグラデーション、奥行きを感じさせるような深い黒の中にどうやったら入っていけるかなというイメージで、暗い方へ暗い方へと行ってみたいという気持ちです。

メロディが渦のようにループしながら、一度上がって光を感じさせることで、逆にその奥の闇や暗さを見せられたかなと思います。

トーンが上がれば光を感じるというのは、音の捉え方としては、難解なアプローチではない気がします。それ以外にも、”低い音や低いトーンで奥行きを探す組み合わせ”のような違ったルールも探してみたいなって感じていました。 
(2曲目は)夜の湖にポツンと浮かんでいる、その水面、黒いゆらゆらのイメージです。
1曲目よりは、少し物質的、具体的な感じかもしれません。あんまり感情を表現しないようにしたいって思いながら、すごく我慢してる状態です。

感情のイメージにアプローチすることもできたのですが、状態・情景だけを表現できました。

その深いところ、空の深さ、水の奥の深さ、湿度高めな感じが伝わるとかな思います。
(3曲目は)硬さやその滲みのような黒のざわざわした、テクスチャー的な感じをイメージしています。
 弾いた後の残響の方が闇を感じられるというか、残響の時が闇っぽいと思うんです。実際に弾いてる音以外の弦や共鳴板、いろいろなものが振動して、共鳴している状態です。

1回すごく間を開けていますが、残響の中に潜って、闇の中に入っていくというか、闇の中を歩いているというか、そんな感覚です。響きの中で、今弾いてる音とその前に出した響きの中に、自分はまだいるつもりなんです。 

自分が行くとか、操作している感覚が少しあるので、人格的な印象を受けるかもしれないですね。

いかがでしたでしょうか?

平井さんのイメージを感じながら、あらためて黒の音を聴くと、新しい感覚に出会えるかもしれません。

文 / 鹿島 直樹 研究員


連動記事:WONDER #3-1 「黒って、こわいの?前編」の記事はこちら