クリエイターの黒い愛用品 vol.014 松居由里子さん

今回のBATONは...
松居由里子 研究員

松居 由里子 「JoJo」デザイナー

イタリア・ヴェネツィア在住。学生時代に英国留学をした後、イタリアに渡りミラノでデザインを専攻。その後ヴェネツィアに移りムラーノ島にてガラス作りを学ぶ。結婚・出産を機にガラスの中でも扱いやすい小さなパーツを使ってのアクセサリー作りに移行。ヴェネツィアに古くからある伝統工芸で、ガラスの極小ビーズをワイヤーで立体的に編んで仕上げる作品を現地の職人マダムたちと共に制作。旧い時代の布を用いた一点物の装飾品も制作し、日本各地のセレクトショップやアンテイークショップ、親交の深い友人のショップにてポップアップ的なイベントを開催する形で活動している。@yurikojojo

 

さまざまなジャンルのクリエイターが愛用する、黒い愛用品。定番品として今も買うことのできるものから、今ではもう手に入らないレアグッズまでご紹介いただきながら、黒のバトンを繋いでいく連載です。

1. TOWAVASE シルクキルトコート

黒のシルクコートというとエレガントな場へのイメージですが、実際はとてもマルチに活躍してくれます。日常のカジュアルなスタイルの時には白いサロペットとアンテイークのブラウスなどに合わせたり、軽やかなコットンドレスの上に纏ったり、夕食やシアターに出かけるときは少しシックな感じに寄せた装いにもしてくれます。

2. 1900年代初頭の小さなバッグ

イタリアのアンティークショップで見つけたシルク素材の小さなバッグ。黒地にオフホワイトの糸で繊細な花たちが刺繍されています。

皮革素材で黒いバッグというと自分の雰囲気には少し固い印象で、普段は布製を選ぶことが多いなか、こちらのバッグはシルクやベルベット生地の持つ優しさとしなやかさに惹かれ選びました。元はクラッチタイプでしたが、グログランのリボンを付けてポシェット型にし、日常使いしています。ポシェットには携帯とリップを入れ、大きなパニエなどと一緒に持ち歩くことが多いです。

3. 1800年代後半のジュエリー

1800年代後半オーストリアハンガリー帝国時代の黒いエナメル七宝のジュエリーたち。「シードパール」と呼ばれる、種粒の如く小さなパールやダイヤモンドが埋め込まれた美しい細工が特徴です。

エナメル七宝のジュエリーは、英国のヴィクトリア女王が喪に服した際に身につけたものが発祥とされています。亡くなった大切な人を思い、黒を基調としたさまざまな素材を用いてジュエリーが作られたとか。なかにはその人の髪の毛が忍ばせてあったりと、かなり意味深い品もありますが、私はそのデザイン性と細工の美しさ、黒いエナメルの持つなめらかな艶と輝きがとても気に入って長年少しずつ集めています。現代の女性の装いにもとてもよく溶け込み、旧い時代のものでありながら洗練された美しさがあるのが魅力です。小さなブローチをいくつかジレの襟元に並べてつけたり、手元が軽くなるシーズンにはバングルブレスレットを重ね付けしたりして、楽しんでいます。