──前田さんは今、黒猫の「にんにん」と暮らしていますが、黒猫ならではの性質や性格ってあるんですか?
保護猫ボランティアさんの話では、黒猫はシャイで警戒心が強い子が多いみたいです。うちのにんにんも最初はかなり警戒心が強くて、慣れるまで本当に時間がかかったんですよ。私が側にいると、ご飯も全然食べず、ケージの中で石みたいにじっと動かなくて。目も合わせてくれない。でも、見守りカメラで留守中に確認すると、自由に動き回り、ちゃんとご飯を食べているんです。
──(笑)。そこからどうやって慣れてくれたんですか?
少しずつ、おもちゃを使ったり、ご飯を手であげたりして距離を縮めていきました。脅かさないように気をつけながら、毎日コミュニケーションを取るようにして、ようやく慣れてきた感じです。今でも急に近づくと逃げることもあるけど、だんだん心を開いてくれています。

──黒猫って、写真を撮るのが難しいと言われますよね。
そうなんですよ。黒い被写体はどうしても写しづらく、可愛く撮るのが難しくて。他の猫は模様や毛並みでふんわりした雰囲気になるけれど、黒猫は光の調整が難しく「ベタッ」と黒く写っちゃう。ブレやすいし、逆に光が飛んで表情が見えにくくなったりもして。保護猫の中でも黒猫の人気がなかったのは、きっと写真映りの悪さも一因だったんじゃないかな(笑)。
──撮影するときのコツってありますか?
最近は「猫のふわふわ感をきれいに出そう」とは考えず、目と毛のコントラストをそのままにしています。細かい部分を映そうとするより、その方が妖精のような黒猫の魅力が伝わる気がしますね。

──これまでの連載で、前田さんは保護猫活動に協力されていると伺いました。具体的にはどのようなことをしていますか?
以前はチャリティ写真展を開催していました。少しでも保護猫の認識が広がればいいなと。今は、縁のあるボランティアグループで、新しい飼い主さんを待っている保護猫たちを撮影して、一匹一匹のプロフィールやエピソードを自分のSNSで紹介したり。
──その際、特に工夫していることはありますか?
できるだけその子の魅力を引き出すようにしていますね。ちょっとユニークな柄の猫には、それが素敵に見えるようなニックネームをつけて、ポジティブなイメージを持ってもらえるように工夫するとか。
──保護猫活動にはいろいろな形がありますよね。参加者それぞれが、無理なく自分たちの持ち味を生かしているイメージです。
そうなんです。猫のイラストを描いたり、団体のロゴマークをデザインしたりする人もいれば、預かりボランティアとして猫を一時的に家で世話する人もいます。フード代を寄付したり、実際にフードや必要なものを持ち込んだりされる方も多いです。
特別なスキルがなくても、できることはたくさんあります。よく聞くのは、Amazonの「欲しいものリスト」を公開しているボランティアさんに、必要なものを送るという方法。ペットシーツなどを送るだけでも、本当に大きな助けになるんです。

──昨今、震災やコロナ禍などさまざまな出来事がありました。保護猫活動にも影響はありましたか?
特にコロナ禍のステイホーム時期は、猫や犬などのペット需要が一時的に高まりました。ただ、それが新たな問題につながった部分もあります。
飼い始めたものの、生活が元に戻ると「やっぱり飼えない」と手放すケースが増えてしまったんです。ペットショップで購入した猫は返却できないことが多く、最終的には保護団体に持ち込まれることもある。それによって、保護団体やボランティアの負担がさらに増えたとも聞いています。
──そういう話を聞くと、本当に心が痛みますね。
ただ、長い目で見ると状況は少しずつ改善している気もしています。雑誌やメディアで保護猫の特集がよく取り上げられ、お笑い芸人の方が保護猫を育てるなど、昔はあまり見られなかった企画も増えています。そうやって多くの人に広がっていくのは、とても良い流れだと思いますね。
インタビュー:黒田隆憲
前田敬子(まえだけいこ) ファッションデザイナー
2002年、ファッションブランド『ADIEU TRISTESSE(アデュー・トリステス)』をスタート。2020年 春より、『LOISIR(ロワズィール)』のデザイナーとして、リネン素材をベースに大人のためのスタンダードな服を提案している。保護猫のえいた、にんにんの飼い主。
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