黒ネコ通信
前田 敬子 研究員

「黒ネコ通信」

研究員の前田敬子さんが、 黒ネコ “ニンニン” との暮らしについて インタビュー形式でお話が進むコラムです。

第2回   神出鬼没の黒ネコ にんにん

──「にんにん」って『忍者ハットリくん』みたいで可愛い名前だけど、やっぱり由来は忍者ですか?

そう。忍者みたいに神出鬼没だから。おそらく母猫に声を出さないように、音を立てないように教え込まれたんだろうけど、保護されている親戚宅へ会いに行ったときも、家の中を探し回ってもどこにもいなくて。「あれー?」と思っていたら、カーテンの一番上の裏側に丸まってぶら下がってて(笑)。忍者みたいに気配を消すのが得意なんですよね。

──かわいいけど、なんだか切ないですね。保護される前に、よっぽど怖い思いをしたのかも。

母猫や、他の姉妹猫たちと比べてもにんにんは体が小さくて。その弱さを警戒心でカバーしていたのかもしれないですね。

──それに比べると、えいたは本当に物怖じしないですよね。

えいたの方が、にんにんよりも先に一緒に暮らしていたんですけど、永代橋の下でコールタールまみれになって遊んでいたくらいだから(笑)、人にも猫にも全く動じない。警戒心みたいなものがほとんどなくて、むしろにんにんの方が野良猫だったら逞しく生きていけるんじゃないかなあ。

──にんにんは、お気に入りの遊びとかあるんですか?

さっきも言ったように、「上に登って逃げる」という習性があって。ベッドルームのカーテンで仕切っている棚の一番上に、自分の寝床を作って大抵はそこで1日を過ごしてますね。夜寝る時もそうだし、来客があって「怖い!」と思うとそこに逃げ込んでる。えいたは来客があると、「なんかもらえるんじゃないか」「盗み食いでもできたらいいな」みたいな感じですぐ出てくるのに。

──あははは。

にんにんも、しばらくすると階段を降りてきて、壁の影からじーっと『家政婦はみた!』みたいな感じで覗いてるから、好奇心は強いのかも。前に柴犬の「どんべえ」が暮らしていた時は、割とすぐ近寄って様子を伺っていたし。むしろえいたのほうが、どんべえへの警戒心を解くのにちょっと時間がかかったんですよね。

どんべえの後ろを、忍者のようにそっと歩く。

──えいたは内弁慶のビビリですよね(笑)。まこもにんにんも、えいたもそれぞれ性格が違うじゃないですか。一緒にいると楽しいことも難しいこともあると思うんですけど、前田さんが絶えず猫と暮らしているのはどうしてですか?

猫の魅力は語り尽くせないけど、まずサイズ感がちょうどいいというか(笑)。えいたは6キロくらいあるけど、それは猫では稀で、基本は女性でも抱えられるぐらいの重さなのもいい。母性本能をくすぐるんですよね……あ、でも男性でも猫好きはたくさんいるか(笑)。

──距離感もほどよいですよね。特ににんにんはツンデレがすごい。

そうそう。大抵は距離を置くけど、二人っきりになると、やたらと甘えてきたりする。そのギャップがたまらないんですよね。にんにんは声もかわいいし、半端に長い毛の長さとかがまた魅力というか。短毛の黒猫は日本に多いけど、長毛の黒猫は珍しい。子猫の頃は短毛だったんだけど、どんどん伸びてボサボサになってきたので手入れも大変です(笑)。

大人になるにつれ、長毛になってきたにんにん。

──猫と暮らすには、その子の習性や性格にこちらが合わせる姿勢が大切かもしれないですね。

「猫との暮らしはこうあるべき」「こうあってほしい」みたいな気持ちが強いと、それがギャップに感じて辛くなっちゃうかも。家具とかも爪研ぎでボロボロにされちゃうし、もうどれだけ処分したことか……(笑)。今、うちにある家具は、そういう爪研ぎから免れた、猫たちのお気に召さなかった家具たちだから。

──そうだったんですね(笑)。

めちゃくちゃお気に入りのビンテージ家具とかでも、容赦無くカリカリやられちゃうので、一緒に暮らしている動物と合わせて自分も変わっていくというか、自分もそれに適応していくことが大事な気がします。

──ところで前田さんは、どんなきっかけで保護猫に興味を持つようになったんですか?

もともとは、知人がネットで保護猫の飼い主を探していて。それで初めて保護猫サイトの存在を知ったんです。猫の写真を色々見ていたら、その中に俳優のスティーヴ・ブシェミみたいな(笑)、ヘンテコな顔の子が載っていて。それで「引き取りたい!」と思って会いにいったのが、最初に暮らした保護猫の「まこ」でした。

──そのまことの日々を綴った『まこという名の不思議顔の猫』は、書籍化されるほど大人気のブログでしたよね。

まこと出会うまでは、保護猫団体がたくさんあることも、個人でやってるシェルターが存在することも全く知らなかったんですけど、知れば知るほど興味を持つようになっていって。動物はもともと好きだし、猫も好きで実家で飼っていたっていうのもあるし、それから保護猫と暮らすようになっていきました。

インタビュー:黒田隆憲