模様や紋章、動植物の歴史人類学研究で知られるフランスのミシェル・パストゥローは、『青の歴史』や『赤の歴史文化図鑑』などを書いた色の研究者としても知られている。『ピエールくんは黒がすき!』は、そんなパストゥローが黒の魅力を伝えるために書いたはじめての絵本。
主人公の男の子ピエールくんは、暗い夜がこわい。オオカミもカラスもこわい。全部黒いから。でもパパやおじいちゃんと話をするうちに “黒という色” を見る視点が変化していく。色が色として認識できるのは光が反射するからで、黒はただ闇のようなものでも、全部同じに見えても、単一の黒という色があるわけでもなく、多様な色の集合としてある。“黒と光の画家”と呼ばれるピエール・スーラージュ(1919-2022)の絵を見たピエールくんは、黒に見えているものの中にはいろいろな色が生きているということに気づき、その世界に引き込まれていった。
「パパ、今じゃぼく、黒が大すきだよ。だって黒ってほかの色ぜんぶになれるから。青とか茶色とか黄色とか赤とか、白にだって」。黒は多様で複雑な色なのだ。
『ピエールくんは黒がすき!』
文:ミシェル・パストゥロー
絵:ローランス・ル・ショー
訳:松村恵理
出版社:白水社
山口博之 (やまぐち ひろゆき)
ブックディレクター/編集者。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部卒業後、旅の本屋BOOK246、選書集団BACHを経て、17年にgood and sonを設立。オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。出版プロジェクトWORDSWORTHを立ち上げ、折坂悠太(歌)詞集『あなたは私と話した事があるだろうか』を刊行。猫アレルギー。
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