今回の種人は...
渡邊真人 研究員
黒にまつわるWONDER(疑問)を探求する場。
第4回の中編となる今回は、「シマウマは、なぜ白黒なの?」というテーマに対して、「動物と黒」までフォーカスを広げ、10~60代100人にアンケートを実施してみた。「自然界にある黒いものといえば?」「カラスはなぜ黒い?」「パンダはなぜ白黒?」「犬や猫が好きな色は?」「自然界で安全な色は? 反対に危険な色は?」 アンケートの回答を通して、あいまいな知識と自由な直観が、黒の想像を膨らんでいく…。

シマウマは、なぜ白黒なの?|中編

「幼いころから愛犬とともに過ごす時間が長く、動物の目にはこの世界がどう映っているのかが気になっていた」という、今回の種人・渡邊真人さんの原体験から生まれたWONDERを受け、『黒の研究所』では、第4回の題材を「動物と黒」と設定し、2024年12月、60代までの男女100人にアンケートを実施した。

そもそも、人間の目に見える黒いものを、自然界でどれぐらい認識しているのか…といった素朴な疑問からはじまり、カラス、パンダなど黒から想起される動物が、その色をまとう理由を考えてみていただくことで、自然界における色の役割を考察したり、犬や猫といった身近な動物の好きな色を回答いただくことで、人間以外の生物に、この世界がどう映っているのかを想像してみていただいた。

人間にとって当たり前となっている黒を、自然や生物へと視点を変えて捉えようとすることで、どんな発見が生まれるのだろうか。「シマウマは、なぜ白黒なのか?」の正解を求める前に、「動物と黒」の想像と妄想を、みなさんの回答を見ながら楽しんでみたい。

Q1. 自然界にある黒いものを、思いつくだけ、思いついた順番に書いてください。

研究所内で「あらためて考えてみると、真っ黒い動物って意外とたくさんは思いつかない」というトピックが起こり、アンケートの準備体操的な位置づけで答えていただいたのがこの問い。「自然界にある黒いもの」と、あえて範囲を広げ「思いつくだけ」答えていただいたときに、動物はどれぐらい出てくるのか…を狙いとしていた。鉱物、植物、現象など含めて「自然界にある黒いもの」として挙がったのは147種類、そのうち、真っ黒(全身の7割以上が黒)な動物の種類は5種類だった。※シマウマ、パンダなどの混色、ラブラドールやウマなど同種で別色がある動物は除く 

動物の本質的な欲求の一つが「生き残るために外敵から身を隠すこと」だと想像すると、5種類という結果は、やはり意外なほど少ないのではないだろうか。

Q2. カラスはなぜ、黒いと思いますか?

多く見られた回答
■外敵から身を守るため(身を隠すため/闇に紛れるため/目立たないから など)
■怖く見せるため(不吉な感じを醸し出している/他者を威圧するため など)
■環境対策(体温調節のため/日の光でカラダを温めやすい など)

多数派を占めたのが、外敵や環境から「守るため」という回答。光を吸収するという黒い色が持つ特徴や、「怖さ」など黒い色に抱く印象など、知識や経験から想像いただくものが多かった。

■雑食だから(食べたものの色が混ざっているから)
■他の鳥との差別化
■もともと白い羽が、アポロンの呪いを受けて黒くなった
■悪役を担っているから

一方で、混色からの発想や、神話に残る逸話、擬人化したアプローチなど、カラスが身近な存在だからか、個性的な回答の幅も広かった。

Q3. パンダはなぜ、白黒なのでしょうか?

Q2のカラスと同様に「身を守るため」という回答は多かったものの、最多回答は「愛されるため」というもの。「それが一番愛されるデザインだから」「パンダだから」といった主観(パンダ愛)が、カラスに比べて圧倒的に強い結果となった。

■もともと白だったのが、突然変異で
■コントラストがはっきりしている方が、目立ちやすいから(仲間、親子間で認識しやすい)
■シロクマとの差別化
■白と黒の動物が結婚してそうなった

「白黒のどちらが先か」を想像した回答や、「他種との差別化」にフォーカスした回答も複数人いたが、白と黒、2色で構成される柄のせいか、カラスほど色の性質や特徴からアプローチする答えは少なかった。

Q2のカラス、Q3のパンダともに見られたのは、「外敵から身を守る」、「捕食者から見つかりにくくする」、「環境に適応する」など、動物が身にまとう色に、生存のための理由を考える傾向。はたしてそれは正解なのか。あらためて専門家に聞いてみたい。

Q4. 猫が好きな色は、何色だと思いますか?
Q5. 犬が好きな色は、何色だと思いますか?

Q6. 自然界で安全な色は、何色だと思いますか?
Q7. 自然界で危険な色は、何色だと思いますか?

カラスやパンダから、動物が身にまとう色の意味を考え、犬や猫など身近な動物から見える色を想像していただいた後に質問してみたのが、自然界における安全な色と危険な色。いずれも選択方式の複数回答可だったため、偏りは起こりづらいと予想していたのだが、安全=緑、危険=赤に偏る結果となった。緑を安全に感じる理由は、森や植物など自然界に近いイメージだから。赤を危険に感じる理由は血、火事、警戒を想起させるなどが挙がった。

安全な色の理由
★野山や水など、自然界にある色だから /緑、青、黄緑など ※最多回答
■自然の色に溶け込み、敵に見つからない /緑、青、黒、白など
■黒の反対だから /白
■心が落ち着く色 /青、白
■信号機のイメージ /青、黄、緑
など

危険な色とその理由
★血など、危険とつながる色だから /赤 ※最多回答
■毒がありそうだから /紫、赤、黄、黒など
■自然界にあまりない、目立つ色だから /赤、オレンジ、黄など
■妖しさを感じさせる /紫
など

その他の回答では「安全な色も危険な色も環境による」というものや、「誰(何)にとっての「安全」なのかがわからなかったので、判断できませんでした」という、鋭い指摘もいただいた。『黒の研究所』としては、黒という色が安全な印象なのか、危険な印象なのかも気になっていたが、「自然界において」という前置きがあったためか、「闇に紛れられるから安全」と「闇が危険」という回答、両方が見られた。

Q8. もしも自分が動物として生まれるとしたら、どんな動物で、何色がいいですか?

最後にしてみたのは、正解のない自由な質問。最も多かった色は白、特に白い鳥が一番人気だった。次に多かったのが茶色。ネコのように、ふわふわ、もこもこ、かわいい動物を想像する人が多かった。そして3位が黒。クジラやシャチなど黒が印象的で強そうな動物や、馬やネコなど気品を求めた回答が目立った。この問いまでに、さまざまな視点から回答を想像してみていただいてきたのだが、いざ「どんな色のどんな動物になりたいか?」と聞かれると、色の果たす役割や特徴よりも、夢のある想像へと回答が偏ったことも、印象的だった。

動物にとって、色とは?

「動物がまとう色の意味とは?」「自然界における黒とは?」

種人のWONDERをきっかけに、日本絵画で黒い何かを描く丹羽優太さん、そして動物と色にまつわるさまざまな角度からの質問に多くの方々から回答をいただいたことで、「動物と色」についての想像が膨らんだ『黒の研究所』。次回はいよいよ、専門家のもとへ取材に訪れ知識を求めてみたい。ともすると擬人化したり、感情的な主観を軸に膨らんでしまう「動物と色」についての「?」に対して、客観的にどんな事実があり、学術的にどんな研究がなされているのか。「シマウマは、なぜ白黒なのか?」はもちろん、生物それぞれに見えている世界について、探求していきたいと思う。


___後編へ続く

WONDERの種人

渡邊真人

「黒の研究所」研究所員

編集者。2002年より出版社に在籍し、雑誌編集のいろはを学ぶ。2009年より大型犬の専門誌『RETRIEVER』編集長に就任。以来、エリア誌、生活実用誌、旅行誌などさまざまな出版物に携わりながら、企業のオウンドメディアなど、コンテンツ開発を軸にしたブランドコミュニケーション事業も手がける。2021年より、株式会社EDITORSの代表取締役。万年筆のインクはブルーブラックを好む。