クリエイターの黒い愛用品 vol.018 橘田優子さん

今回のBATONは...
橘田優子 研究員

橘田 優子(kitta主宰)
兵庫県明石市生まれ。瀬戸内の海と空の色を見て育つ。現在は沖縄県北部にて植物染料の栽培や採取からデザイン、縫製まで、物が生まれてから土に還るまでを分断のない一つの流れとして捉え、自然と人を媒介するというコンセプトを軸に衣服や空間の制作を行なっている。HP: kittaofficial.com Instagram: @kittaofficial 

 

 

 

さまざまなジャンルのクリエイターが愛用する、黒い愛用品。定番品として今も買うことのできるものから、今ではもう手に入らないレアグッズまでご紹介いただきながら、黒のバトンを繋いでいく連載です。

Krurteno dress-silk khadi / kitta

手織りのシルク生地を琉球藍と矢車玉で染め重ねた青みのある黒のワンピース。

私はもう数十年の間、生活のほとんどの時間を植物で染めた衣服を着て過ごしています。
好きな色はクローブで染めたイエローベージュ、茜と福木で重ねた赤煉瓦色、琉球藍の赤みを帯びた青色など、数えきれないほどありますが、着ていくうちにどうしても汚れたり、色褪せたり、はたまた似合う色や気分の変化も起こります。そんな時は元の色の上に新しい色を染め重ねて変化させています。
そうやって長く着続けているうちに私のクローゼットの大半を黒っぽい色が占めるようになりました。
昔苦手だった黒がいつの間にか好きになったのは、こうやって色を重ねて生まれる黒に出会ったから。
光は重ねると白になるけれど、色は重ねると黒くなってゆく。時間と重さを携えて生きる人間と、染め重ねて辿り着く黒がどこか似ているように感じています。

写真は娘の結婚式に着るために作った手織りのシルクカディのワンピース。琉球藍と矢車玉で染め重ねたもの。角度によって青が見え隠れする独特の色の奥行きに加え、手織りシルクならではの光沢がメタリックな表情を生んでいるお気に入りの1着。